図書館スタッフのおすすめ本

図書館スタッフによるおすすめ本をご紹介いたします。
タイトル、著者をクリックすると図書館スタッフによる書評(紹介文)とOPACへのリンクが表示されます。
▼理科系の作文技術, 木下是雄著
 本書は、大学生として避けては通れないレポートの作成や、論文執筆、研究発表に関するハウツー本かつ必読書である。このことは、本書がすべてを網羅した大型本であるということではない。文章が簡素かつ理路整然と並べられており、重要な項目は箇条書きで示されているだけでなく、要所に具体例が示されている。そのため、通読せずとも作文中に躓いた項目を引き出し、直接的なアドバイスを得ることができるという点で、一度は読んでおくべき本である。
 タイトルが含意する作文技術は、他人に読んでもらう<仕事の文書>の書き方であり、どのようにして「事実と意見を区別すること」「明快・簡潔な文章を目指すこと」が可能なのかが順序立てて述べられている。ここには、文学、文芸的な「いい文章」は必要なく、効果的に表現、伝達するための方法論が求められる。もう一つの主役が論理の展開(論理展開の順序)である。特に理科系においては、結論に到達してから振り返ってもっとも簡単な道筋が示される必要がある。
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▼生物と無生物のあいだ , 福岡伸一著 
 「対象の本質を明示的に記述することはまったくたやすいことではない。」という著者の気付きからはじまる本書は、著者の回顧録と分子生物学の研究史が折り重なって展開されていく。さらに、研究者らしい理路整然とした文章となっているため、専門知識がなくても楽しめる内容となっており、門外漢にも読みやすい。ただし、注釈などはないので、解説の無い用語については調べる必要があるが、わからないことをそのままにして読み進めても著者の苦労や楽しみといった感情や、研究の躓きやひらめきを読み取ることができる。
 残念ながら、本書の締めくくりは、「生命とは」という問いの答えを明示してはいない。生物や細胞の複雑さや困難さ、あるいは生命を機械的、操作的に扱うことの不可能性が示される。それは、本書で研究史を鑑みると「生命」を研究対象として捉えていた報復のようにも思え、すっと腑に落ちる。

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▼2001年宇宙の旅 : 決定版, アーサー・C. クラーク著 ; 伊藤典夫訳 
 2045年問題をご存じだろうか。AIが人間の知能を追い越す転換期に、予測不能なことが起こると言われている問題のことである。
 今から約50年前の1977年、SF作家アーサー・C・クラークによって書かれた「2001年宇宙の旅」には、人工知能や人工冬眠など昨今やっと馴染みあるものとなった科学技術が実にリアルに描写されている。
 物語は人類が文明を築く300万年前、ヒトザルが荒野での熾烈な生存競争を勝ち抜くため武器の利用を会得する場面から始まる。
 突如出現した謎の石板モノリスの正体とは何か、史上最高の人工知能でありながら人類に反乱を起こしたハル9000が象徴するものとは何か。
 ChatGPTやBingChatなどの“AI”に対する強い関心と一抹の不安が渦巻く現代にこそ、一読の価値がある本だと言える。数多あるSF作品の源流とも言える名作を、この機会に是非手に取ってみてはいかがだろうか。

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▼ごみ育 : 日本一楽しいごみ分別の本, 滝沢秀一著 
 普段、何気なく捨てている「ごみ」。この本を読んで分別方法について知らずに間違って捨てていたということに気付くことができる。
 ごみの分別に関する問題が初級編から卒業編まで50問あり、簡単なクイズ形式になっているので読みやすく、いろいろなごみをどのように分別すればいいのか、またその理由についてわかりやすく書かれている。
 タイトルの「ごみ育」とは「ごみの教育」のことであり、食育のように幼いうちからごみについて考えて欲しいという著者の思いを感じ取ることができる内容となっている。
 子供でも理解できるような話し言葉で書かれている文章だが、大人が読んでも為になるので、楽しみながらごみについて学ぶことができる。
 住んでいる地域によってごみの分け方は様々だが、資源のことや環境のことについて考えるきっかけとなる一冊。

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▼すすっと瞑想スイッチ : 疲れにくい心をつくる , 斎藤孝著
 情報化社会の現代では、たくさんの情報と向き合うことや、急速な環境の変化に対応を求められる中で、不安や疲れを感じ、ストレスを抱える人が多いかもしれません。
 本書は、身体論などを専門に研究する著者が、心身をリフレッシュさせ、勉強のパフォーマンスや生活の質を向上させる方法を書いています。また、意識的に周囲や情報を遮断することが有効であると考え、日常生活に瞑想を取り入れることを提案しています。
 本書タイトルの「瞑想スイッチ」とは、瞬間的に瞑想状態を作り出すための「きっかけ」のことで、生活の中で実践できる57のスイッチが具体的に取り上げられています。日常のなかに存在する自分に合った「瞑想スイッチ」を探して、オンとオフを自在に行えるように訓練をすると、常態的に心のメンテナンスを行うことができるようです。
 実用的なストレス対策に取り組みたいと考えている人におすすめの1冊です。

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▼中世の写本ができるまで , クリストファー・デ・ハメル著 ; 立石光子訳 
 中世の写本は、装飾のある美しい本というイメージでしょうか。
 ヨーロッパでは活版印刷が主流になるまで、羊皮紙に羽ペンでインクをつけながら書いたものが主な書物でした。これは、獣の皮を凹凸なくきれいに整え、人の手で文字を書いてから、彩飾担当が色づけや装飾を施して作られます。このように、1冊の本が複数の人によって分業で作られていたのです。すべてが手作業ですから、そう簡単に1冊が仕上がりません。ましてや、文字を書き終えてから彩飾するためには、ページのレイアウトを予め決めておかなければなりませんから、準備にも時間を費やしたことでしょう。
 このような工程を経て作られた写本には、携わった人々の痕跡がところどころ姿を現し、人間味あふれる様子がうかがえます。知らなかった写本についてのあれこれ、製作工程もさることながら、古の書物に触れてみませんか。

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▼動物行動学者、モモンガに怒られる : 身近な野生動物たちとの共存を全力で考えた! , 小林朋道著 
 あの可愛らしいモモンガに怒られる!?
 どんな話なのか、タイトルだけでワクワクしませんか?
 動物が産む子供の数はバラバラで、哺乳類の中でも異なるのだそうです。哺乳類が産む子供の数は?哺乳類の子育て方法は?いかに生存していくには?その疑問や仮説を解明していく話を読んでいると、自分も一緒に調査・観察をしている気分になります。
 芦津の森でニホンモモンガの子供の調査・観察をしている時に、母モモンガに睨まれた著者の小林先生。モモンガに睨まれるなんて!ちょっと楽しそうな経験ですね。
 小林先生の動物に対する愛や、ちょっとドジな小林先生の、読者に語り掛けてくるような文章に、「それで?どうなったんですか?」と、話の続きが知りたくなり、気付けば時間を忘れて読みふけってしまいます。
 「ヒトと野生動物たちとの共存」永遠のテーマかもしれません。

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▼ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー : the real British secondary school days , ブレイディみかこ著 
 昨今、「多様性」という言葉をよく耳にするようになった。
 本書はアイルランド人の父と日本人の母を持つ中学生の息子を中心に、学校とそれを取り巻く大人たちの生活をみずみずしく描いたエッセイである。彼は英国という土地で日常を過ごしながら、自分がイエローでホワイトであるという自覚とともに、人種、民族、ジェンダー、貧困、差別やアイデンティティといった様々な問題に直面していく。
 母である著者のブレイディ氏は「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」と息子へ語る。子どもたちは先入観を持たず、様々な物事を多面的に捉えながら学び、成長していく。そんな様子を見て、大人たちもまた、気づきを得ていく。
 漠然とした<多様性>の中に潜む問題を日常として描いた本作に、誰もがどきりとするようなヒントが多く隠されている。

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▼まち, 小野寺史宜著 
 大学生活にはもう慣れただろうか?親元を離れ、一人暮らしを始めた学生の中には、早くも戸惑いを隠せない人もいるだろう。新生活では学業に加えて、家事やアルバイト、サークル活動など、慣れない事にたくさん直面する。しかし、この「慣れない」ということは、人生において大きな意味があるということをこの本は教えてくれる。
 『まち』の主人公、瞬一は幼い頃を群馬で過ごし、高校卒業と同時に東京に上京する。祖父の「よその世界を知れ。知って人と交われ」という言葉の通り、多くの人と出会い瞬一は成長していく。この本を読むと、人は誰でも慣れない生活のなかで人と交わり、助け合いながら過ごしていることを思い知らされる。「慣れるっていうのは、感覚が麻痺するっていうことだ。」麻痺しないのもつらいだろうが、「でも、生きることに慣れない人間になれる。」 
 学生のみなさんも瞬一と共に慣れない人生を楽しむのは、いかがだろうか。

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